PSO2とプレイ日記をのんびり書いてます。チームメンバーが書くことも

9.彼の知らないこと (双子の星に照らされて)

双子の星に、照らされて
9幕 彼の知らないこと



――これは、セイが目を覚ます少し前からのやりとり。

「フィリアさん! セイは!」

パティの問いかけに、ナースは険しい表情を崩さなかった。

「……正直、どうなるかわかりません」

ベッドの上には意識を失ったセイ。
その右腕は、濁った赤色に染まっていた。
どう見ても正常な状態ではない。

「侵食……されてる」

ティアは口元に手を当てて呟く。
フィリアは包帯を丁寧にゆっくりと巻いていく。

「ダーカーはフォトンの活性化により、その力を増すといいます。
 ですからこの包帯はフォトンの動きを抑えるモノ……。
 それでどれほどの効果があるか、わかりません」

巻き終えた彼女は、隣のベッドにあぐらを組んで座る少女に向かい、

「ありがとうございました。
 六芒均衡……クラリスクレイス様。
 あなたの救出が少しでもズレれば、手遅れだったでしょう」

その名前を口にした。

六芒均衡。
それはアークスの中でも最高峰に位置する、
エリート中のエリートに与えられる称号。

たった6枠しかないその地位は、全アークスたちの憧れだ。
そしてクラリスクレイス……それはその中でも伝説級とされる3人のうちの1人。
三英雄と呼ばれるそのポジションは、名前を継承される。

今ここにいるクラリスクレイスは三代目……
幼い容姿ではあるが、フォースの中での最強のアークス。

「さて、助かったかどうかはまだわからないぞ?」

からかうような声。
パティがむっとして叫ぶ。

「どうして!? セイはこうして無事なのに!」

けれどクラリスクレイスは肩を竦めて

「ダーカーに侵食されたアークスなんて前代未聞。
 少なくとも私は聞いたことがない。
 動物たちはあのように正気を失い凶暴化するのだ。
 このセイという男が、同じようにならないという保証はどこにある?」

誰もが口にし辛いことを平然と言い放った。
六芒均衡にとってはセイの命よりも、
今ここにいる健全な者たちの命の方が大切だから。
感情ではない、理屈で割り切った明確な答え。
幼い姿だからといって、甘くはない。

彼女は三英雄なのだ。
くぐってきた修羅場の数も違う。
そして、彼女の背負う責任もまた、
並のアークスには想像のつかないものなのだから。

「そんな……まだわからないじゃないですか!」

ティアもわかってるはずだ。
けれど、そう言わざるを得なかった。

「アークスになるということは、命がけで戦うということ。
 お前たちも、当然知っていただろう。
 そしてこれは、先輩のアークスであるお前たちの実力が至らなかった結果だぞ」

「私たちが……セイを頼ってしまったから……」

結果として、そうなってしまっただけだ。
パティとティアに罪があるわけではない。

けれど、感情としては自分たちが研修生である彼を、
犠牲にしてしまったように……感じてしまう。

「ごめん、なさい……セイ」

ティアが、顔を両手で覆って崩れ落ちる。
涙が、止まらない。
出会ったばかりとはいえ、彼は仲間だったのだ。
自分たちを救うために、戦ってくれたというのに。

「まあ、手を切り落としてキャストと同じようにパーツにしてしまえば、
 ひょっとしたら良いかもしれんな」

あっけらかんとクラリスクレイスは言い、

「そういえばレギアスじぃやが最近、右腕の調子が悪いと言っていた。
 ちょうどいい、もし腕が必要になった私がもいできてやる。
 三英雄の腕を使えるなんて、名誉なことだろう?」

「勝手に決めないで!
 ま、まだわからないじゃない!」

けれどパティはまだ諦めていなかった。
その様子に、クラリスクレイスは面白そうにニヤリと笑う。

「どうかな?
 案外こいつ自身が、腕を切り落としてくれと頼んでくるかもしれないぞ」

「そんなこと絶対ないから!」

根拠も何もないのはわかってる。
けれど彼女は必死に叫ぶ。

そんな彼女に、クラリスクレイスは冷酷に告げた。

「なら、苦しんでいるようなら貴様がそいつの腕を……切り落とせ」

「……え?」

「もし腕の侵食が原因で理性を失うなら、そこがなくなれば収まるかもしれない。
 腕一本で命が助かるというなら、安いものだろう?」

「…そんな」

パティは絶句する。

「貴様は、そんな覚悟もなくアークスになったのか?」

彼女は、一度泣きじゃくる妹を見てから、

「わかった!
 でも、絶対にそうはならないから!」

三英雄を睨み返した。
その瞳に宿った意志の強さに、クラリスクレイスは「ほう」と感心した。

「……ぅう」

その時、セイが呻いた。
どうやら、意識が戻ろうとしているらしい。

「セイ!」

顔を覗き込んで、精一杯の想いを込めて叫ぶ。

「セイ!」

戻ってきてと。

すると彼は小さく呟いた。

「……を落としてくれ」

「えっ……」

もしかして、腕を……

けれどパティは諦めなかった。

「セイっ! しっかりして!」

すると今度ははっきりと、聞こえた。

「頼むから、声を落としてくれ……鼓膜が破れる」

早とちりした自分が、猛烈に恥ずかしくなった。
勿論、自我がありそうな様子なのは嬉しい。
けれど、それ以上になんだか言葉にできない感情が溢れてきて

「ばか!」

パティは思い切りセイの顔面を殴っていた。

「無事、なんだよね?」

問いかけると、彼は頷いた。

良かった。
声には出さす呟き、くたっと脱力する。

フィリアがすぐに容態を確認していた。
そこには先ほど話していた内容とは違うことを教えている。
どうやら、セイに心配をかけないためのようだ。

セイが何かをクラリスクレイスに言うと、
彼女は杖でわざと右腕を叩いていた。

「いって! いきなり何しやがる!」

抗議する彼を、三英雄は冷静に見つめて、

「フィリア。こいつに怪我の症状を伝えてやれ」

どうやら大丈夫そうだと判断したようだ。

彼が色々とクラリスクレイスとやりとりをしているその姿を、
パティはほっとして眺めていた。


これが、セイが知らされなかった、正確な現状だった。


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