PSO2とプレイ日記をのんびり書いてます。チームメンバーが書くことも

12.初めてのクライアントオーダー (双子の星に照らされて)

双子の星に、照らされて
12幕 初めてのクライアントオーダー


「……そんなわけで、私たちパティエンティアに、
 クライアントオーダーが入っています」

まるで何事もなかったかのようにティアが端末を見ながら話す。
綺麗なもみじを咲かせたセイは頬を押さえながら聞き返す。

「クライアントオーダー?」

「そう、アークスに対する依頼だよ。
 私たちもただ調査のためだけに未開の惑星へ行くわけじゃないから。
 依頼人は料理人からオラクル協議会まで千差万別」

ティアの言葉に、パティはにひひと笑う。

「勿論、報酬も出るからね~。
 知名度が上がればそれこそ六芒均衡からも……」

「「ないない」」

チームメンバーの声がはもる。

「それで今回の依頼ってのは?」

「んっとね、研究員の人からなんだけど……」

ティアが端末からデータを二人に転送する。

エメライン



「熱波の観察……」

「えーなんか地味だなあ。
 ティア、もっと報酬がいいのとかなかったの?」

「パティちゃん。
 チームマスターなら自分のチームの実績くらいは
 きちんと確認してから発言しようね」

「ほら、アタシたちも人数も増えたことだし……」

「私たちにはこれくらいでいいの。
 セイだってアークスとして初めてなんだから」

ぶーたれる大雑把な姉と、諭すしっかり者の妹。
これだけ見ていると、
先ほどまでお腹を出して寝ていたのが誰だかわからなくなる。

「セイ、何か言いたいことがある?」

ギロッと睨んでくるティアにセイは首を振って

「いや……その、惑星アムドゥスキアって、
 どんなところなのかなって」

とりあえず話を逸らした。

パティが嫌そうな顔をする。

「とにかくね、すっごく熱いところなんだよね!
 もーフォトンの防護服がないといるだけで火傷するくらい」

そして人差し指を立てて、

「あとね、知能が高い龍族たちが暮らしているんだけど、
 なんか最近は話も通じなくて問答無用で襲ってくる場合もあるの。
 その原因はダーカーなんじゃないかって言われてるの!」

「へー、詳しいな」

「ふふん、先輩アークスだからね。凄いでしょ?」

「まあ、パティちゃんも私も、アムドゥスキアは行った事ないんだけどね。
 いつも通り、人から聞いたことを左から右へ流してるだけ」

「ちょっと、ティア!」

「え、パティちゃん何するの!」

そうして姉妹はきゃーきゃー騒いで喧嘩を始めた。

セイはその二人を横目に惑星アムドゥスキアのことを端末で情報を閲覧する。
気候や原生生物、調査がどれだけ進んでいるかに目を通して

――ここ数ヶ月でダーカーによる侵食が確認されている。

最後の一文に、右腕がうずいた気がした。



 
SHIP4で活動中のチーム「Perch」の求人内容はこちら

パティ&ティアがヒロインの物語「双子の星に、照らされて」はこちら

PSO2サポータズリンクのページはこちら。
(気が向いたら当サイト 止まり木の詩 に投票してやってください。)



スポンサーサイト
双子の星に、照らされて | コメント:0 | トラックバック:0 |

11.チームルーム?マイルーム? (双子の星に照らされて)

双子の星に、照らされて
11幕 チームルーム?マイルーム?


「えーと……こっちなはずなんだけどな」

セイはチームマスターからのメールを何度も見返しながら歩く。
表面上は成り行きで入りましたという顔をしているが、
実のところを言うと「チーム」に対して最初は期待感を持っていた。

なにせアークスに入ったらまずはソロ活動で簡単な任務をこなして、
それで成果を出して初めてチームからスカウトされるのだから。
例え自分含めて3人という少人数チームであっても、
任される依頼の難易度は必然的に高くなる。

実際、同期のアフィンとレダ……もう一人は名前も知らないが、
チームに所属している新米アークスはまだいない。

「……しかし、嫌な予感がしてきたな」

けれどチームルームに近づくに連れて、どうにも不信感が出てきた。
今、セイが歩いてるのはどう見てもアークスたちの居住区だ。

「……」

そして、その予感は的中した。
住所に間違いはない。
コピー紙に安っぽい字で「パティエンティアのチームルーム」の張り紙。
そして、きちんとした表札のプレートに書かれているのは――

カシュー。

軽い音を立てて扉が開く。

「おそーいっ!」

部屋に入ると同時にクッションが飛んできたので、
貰ったばかりのグングナアタの柄ではじき返した。

「あふっ!」

狙い通り、自分に投げつけてきたチームマスターに見事命中。

「ちょっと! 遅刻してきてその態度はなに!?」

ぷんぷんと怒るチームマスター……パティ。
だが怒ると言っても、ソファーにうつぶせで寝転びながらでは
駄々こねてじたばたしているようにしか見えない。

「俺としては、この部屋の惨状について先に説明して欲しいだけど」

チームルームと呼ばれるところはカオスだった。
モダン・テーマ/Bの落ち着いた雰囲気で、
サイズSだから三人でいるには十分な広さだ。

だというのに、散らかり具合が凄い。
まずソファーが6つある。しかも全部色が違う。
ベーシックローテーブルには何故かラッピー人形。
ベーシックシェルフにはよくわからない浮いてる石とか、
謎のウォールペイント、皿、スポーツカー。
隅にはダーツ台もある。

別にチームルームが散らかってるのは構わない。
けれど……

「ここ、俺に支給された部屋みたいなんだが」

そう、ここはアークスになったセイ=ミズラに与えられたマイルームなのだ。

「だってー私たちみたいな小さなチームが、
 わざわざチームルームなんてもらえるわけないよ」

「で、ついでに自分たちの余ったマイルームグッズを持ち込んで、
 俺の部屋をチームルームという名目で物置にしたと」

何故か置かれていた動いていないセンタク・キーの上にあぐらを組む。

「どうせパティの私物なんだろ?
 センスの欠片もない。
 ベランダにもよくわからないモノがここからでも見えてるぞ」

そう言って睨むが、何故かパティは「ふししし」と嫌らしく笑った。

「センスの欠片もないんだってさ、ティア」

「え?」

「あれ? 返事ないね。その辺にいるはずなんだけど」

パティが何故か壁に向かって置かれたソファーを覗き込む。
セイもその後ろから見るが

「うわ……」

そこにティアはいた。
仰向けに寝転がり、すやすやと寝息を立てている。
けれど、着ているリトルプリムがめくれてへそは丸出し。
手足もだらしなく広げられている。

何か良い夢でも見ているのか、幸せそうな寝顔だった。

「……これ、パティじゃないのか?」

「なんでそう思うのかなー?
 正真正銘、この情けない寝相のが私の妹のティアですー」

セイのイメージでは、姉のパティであれば違和感のない姿だった。
元々が大雑把そうで、行き当たりばったりな性格だと思っていたからだ。

逆にティアは物腰としても落ち着いているし、几帳面そうである。
いかにも「良妻賢母」になるタイプだと思っていたのだが……

「意外だな。この家具もティアの私物なんだろ……」

「まーねー。
 でもねティアって、仕事のこと以外はずぼらだよ。
 料理もできないし勿論家事だってできないんだ」

改めて彼女の姿を見て、やっと思い出したかのようにセイは視線をそらした。

「あれ、セイってば恥ずかしがってる?」

「ばっ、馬鹿。
 ティアもこんな姿見られたくないだろうって思ってだな……」

「……イタズラしちゃおうっか?」

「や、やめておけって」

「ふひひ、セイはウブなんだね」

致命的な弱みを握られた気がする。
騒いでいたせいか、ティアが「……んん?」と目を覚ました。

そして、姉とセイ、そして自分の今の姿を確認して、

「い……」

パティは耳をふさいだ。

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

少女の絶叫と、セイの頬がビンタされた音が響き渡った。



 
SHIP4で活動中のチーム「Perch」の求人内容はこちら

パティ&ティアがヒロインの物語「双子の星に、照らされて」はこちら

PSO2サポータズリンクのページはこちら。
(気が向いたら当サイト 止まり木の詩 に投票してやってください。)


双子の星に、照らされて | コメント:0 | トラックバック:0 |

10.同期と先輩と (双子の星に照らされて)

双子の星に、照らされて
10幕 同期と先輩と


「よっ、セイ。無事だったんだな!」

メディカルルームを出たセイがロビーを歩いていた時だった。
呼ばれた声に振り返ると、そこにいたのは

「アフィン!」

アフィン


同じく研修生として、修了任務に参加していた同期だった。
金髪のショートカットに、人懐っこい笑み。
まだどこか幼さの残る童顔の青年。
黒を基調としたブリッツエースを着こなしている。

「はぐれたって聞いたから、心配したぜ。
 でもお互い無事で良かったな」

そういえばブリギッタの通信で
アフィンは無事だったと言っていたのを思い出す。
友人の無事な姿にセイはほっとした。

「アフィンもダーカーに襲われたのか?」

「そうなんだよ!
 いきなり凄い数のダーカーが沸いてきてさ!
 俺、一人じゃ絶対駄目だったぜ……」

「俺はパティとティアっていう双子のアークスに助けてもらったよ。
 アフィンはゼノっていうベテランに助けてもらったって聞いたけど」

彼は首を振る。

「いや、ゼノさんには確かに助けてもらったけど、最後だけだ。
 それまで頼もしい相棒が頑張ってくれたお陰だよ」

「相棒? そういえばもう一人、研修生がいたんだっけか」

そう言ってから少し考えて

「セイはそういえば相棒と面識ないと思うぜ。
 俺も試験で初めて会ったくらいだし。
 なんかさ、不思議なやつなんだよ」

「……不思議?」

「ああ、なんかアークスに襲われる前に突然声が聞こえるって言い出して。
 走り出したのを追いかけたら、女の子が倒れてたんだよ。
 それが、とても声なんて聞こえる距離じゃなかったし、
 俺には聞こえなかった」

変な話だと思いセイは聞き返そうとしたが、
話しているアフィン自体にもよくわかっていないようなので黙って聞いていた。

「助けたのはマトイっていう女の子でさ。
 なんだか記憶を失ってるんだ。
 相棒にも懐いているみたいだし、なんか気になるんだよな……」

ナベリウスにアークス以外はいないはずだ。
だというのにアークスではない民間人、
しかも女の子が倒れているだなんてありえるのだろうか。
そしてアフィンが相棒と呼ぶ研修生は何故助けられたのか。

そもそもアークスの研修生の同期で見知らぬ顔、というのも少し気になる。
そんなに研修生の数なんて多くない。
後輩の顔ですらほとんど知っているくらいなのだ。

セイが少し考え込んでいると、

「お前がセイか!」

そこに新たなアークスが会話に参加してきた。

「話は聞いてるぞ!
 ナベリウスの修了任務では不測の事態にも関わらず、
 勇敢に戦ったようなだな!」

たくましい体つきに、大きな声。
少し色黒で、歳は20代後半くらいだろう。
見るからに「熱血!」という雰囲気を持つ男性だ。

オーザ


「俺の名前はオーザ。
 お前と同じハンターだ。
 修了任務でダーカーに襲われた顛末を聞いてな、
 いてもいられなくなって探していたんだ」

ちなみに、ちょっとだけ……少し暑苦しい。
随分と話し方も強引な人だなーと思ってしまった。

「えーと……その」

突然のことになんて答えるべきかとセイが悩んでいると、
先輩アークスは「言わずともわかっている」と頷き

「使っていたグレイブが折れたそうだな!
 そこで新しいパルチザンを探していると思ってな」

「ああ、そういえば……新しい槍も必要だな……」

色んなことが立て込んでて、一番身近なことを忘れていた。

「先輩から、見込みのある優秀なハンターに餞別だ」

彼が背負っていた槍を手渡してくれる。

「これは?」

先が二股に分かれたフォトンの淡い輝きが矛を覆っている。
流麗なフォルム、それでいて力強い装飾のされた槍だ。

「グングナアタ。
 俺が昔に愛用していたパルチザンだ。
 お前の実力なら使いこなせるだろう」

グングナアタ


「凄いな……カスタマイズされてフォトン量も高い」

先輩からのプレゼントに、セイは素直に喜ぶ。

「ありがとう、オーザさん。
 こいつを新しい俺の愛槍にさせてもらうよ」

「ああ、そうしてくれ!」

オーザはちらっとアフィンに視線を移して、
腰に吊るしたライフルを見る。

「ハンターはいいぞ。
 圧倒的な体力に高い防御力……
 まさしく、先頭の要といえる。
 お前もいつでもハンターになってもいいのだからな」

「は、はぁ……」

そう言って、きょとんとしたアフィンの肩をばんと叩いて歩いていった。

「セイ、精進するのだぞ!」

二人してその背中を見送る。

「なんか、凄い人だな」

「あ、ああ……いかにもアークスっていうか」

そこでアフィンの通信機が甲高い音を立てた。
彼は取り出し、見てから「あっ」と呟く。

「悪い、相棒にクエスト呼ばれてたんだった。
 セイも体が大丈夫なら、一緒に行くか?」

「ああ、いや悪い。
 俺もそういえばチームルームにこいって言われてたんだ」

お互いに拳をぶつけあう。

「そうか、頑張れよ」

「お互いにな」

走り出したアフィンが、思い出したかのように

「あ、俺のパートナーカード渡しておくよ。
 いつでも呼んでくれていいからな!」

カードのデーターを投げてきた。

「俺のもよろしく頼むぜ」

セイも自分のカードを投げる。
二人はカードを交換しあう。

そして同じ時にアークスになった二人は、
それぞれの方向へと進み始めた……

その先にある、大きな物語へ飛び込むために……



「双子の星に、照らされて」のタイトルページはこちら

SHIP4で活動中のチーム「Perch」の求人内容はこちら



双子の星に、照らされて | コメント:0 | トラックバック:0 |

双子の星に、照らされて―タイトルページ―

プロローグ的なものも終わり、一区切りついたので、
そろそろタイトルページ作っておくことにしました。
それぞれのタイトルからそれぞれのページへいけます。
今後は更新の度にここに追記して、いつでも読み返せるようにしたいと考えてます。
※本作はストーリーモードを全然進めていない人間が書いてるので、
 実際の設定は異なる場合が多々あります。
※基本、見直さずにアップしてるので誤字脱字がよくあります
※勝手にパティ&ティアをヒロインにしてます
※所々 ご都合主義で通してます。
※パティちゃんのワイヤーランスのワイヤーは敵が引っ張っても切れないけど、
 味方が攻撃すると都合よく切れる魔法のワイヤーです。とても便利です。

双子の星に、照らされて

 
1.始まりは迷子から

2.双子のアークス

3.始めての遭遇

4.状況確認

5.侵食されたモノ

6.戦うということ

7.双子の星

8.アークスに

9.彼の知らないこと

10.同期と先輩と

11.チームルーム?マイルーム?


双子の星に、照らされて | コメント:0 | トラックバック:0 |

9.彼の知らないこと (双子の星に照らされて)

双子の星に、照らされて
9幕 彼の知らないこと



――これは、セイが目を覚ます少し前からのやりとり。

「フィリアさん! セイは!」

パティの問いかけに、ナースは険しい表情を崩さなかった。

「……正直、どうなるかわかりません」

ベッドの上には意識を失ったセイ。
その右腕は、濁った赤色に染まっていた。
どう見ても正常な状態ではない。

「侵食……されてる」

ティアは口元に手を当てて呟く。
フィリアは包帯を丁寧にゆっくりと巻いていく。

「ダーカーはフォトンの活性化により、その力を増すといいます。
 ですからこの包帯はフォトンの動きを抑えるモノ……。
 それでどれほどの効果があるか、わかりません」

巻き終えた彼女は、隣のベッドにあぐらを組んで座る少女に向かい、

「ありがとうございました。
 六芒均衡……クラリスクレイス様。
 あなたの救出が少しでもズレれば、手遅れだったでしょう」

その名前を口にした。

六芒均衡。
それはアークスの中でも最高峰に位置する、
エリート中のエリートに与えられる称号。

たった6枠しかないその地位は、全アークスたちの憧れだ。
そしてクラリスクレイス……それはその中でも伝説級とされる3人のうちの1人。
三英雄と呼ばれるそのポジションは、名前を継承される。

今ここにいるクラリスクレイスは三代目……
幼い容姿ではあるが、フォースの中での最強のアークス。

「さて、助かったかどうかはまだわからないぞ?」

からかうような声。
パティがむっとして叫ぶ。

「どうして!? セイはこうして無事なのに!」

けれどクラリスクレイスは肩を竦めて

「ダーカーに侵食されたアークスなんて前代未聞。
 少なくとも私は聞いたことがない。
 動物たちはあのように正気を失い凶暴化するのだ。
 このセイという男が、同じようにならないという保証はどこにある?」

誰もが口にし辛いことを平然と言い放った。
六芒均衡にとってはセイの命よりも、
今ここにいる健全な者たちの命の方が大切だから。
感情ではない、理屈で割り切った明確な答え。
幼い姿だからといって、甘くはない。

彼女は三英雄なのだ。
くぐってきた修羅場の数も違う。
そして、彼女の背負う責任もまた、
並のアークスには想像のつかないものなのだから。

「そんな……まだわからないじゃないですか!」

ティアもわかってるはずだ。
けれど、そう言わざるを得なかった。

「アークスになるということは、命がけで戦うということ。
 お前たちも、当然知っていただろう。
 そしてこれは、先輩のアークスであるお前たちの実力が至らなかった結果だぞ」

「私たちが……セイを頼ってしまったから……」

結果として、そうなってしまっただけだ。
パティとティアに罪があるわけではない。

けれど、感情としては自分たちが研修生である彼を、
犠牲にしてしまったように……感じてしまう。

「ごめん、なさい……セイ」

ティアが、顔を両手で覆って崩れ落ちる。
涙が、止まらない。
出会ったばかりとはいえ、彼は仲間だったのだ。
自分たちを救うために、戦ってくれたというのに。

「まあ、手を切り落としてキャストと同じようにパーツにしてしまえば、
 ひょっとしたら良いかもしれんな」

あっけらかんとクラリスクレイスは言い、

「そういえばレギアスじぃやが最近、右腕の調子が悪いと言っていた。
 ちょうどいい、もし腕が必要になった私がもいできてやる。
 三英雄の腕を使えるなんて、名誉なことだろう?」

「勝手に決めないで!
 ま、まだわからないじゃない!」

けれどパティはまだ諦めていなかった。
その様子に、クラリスクレイスは面白そうにニヤリと笑う。

「どうかな?
 案外こいつ自身が、腕を切り落としてくれと頼んでくるかもしれないぞ」

「そんなこと絶対ないから!」

根拠も何もないのはわかってる。
けれど彼女は必死に叫ぶ。

そんな彼女に、クラリスクレイスは冷酷に告げた。

「なら、苦しんでいるようなら貴様がそいつの腕を……切り落とせ」

「……え?」

「もし腕の侵食が原因で理性を失うなら、そこがなくなれば収まるかもしれない。
 腕一本で命が助かるというなら、安いものだろう?」

「…そんな」

パティは絶句する。

「貴様は、そんな覚悟もなくアークスになったのか?」

彼女は、一度泣きじゃくる妹を見てから、

「わかった!
 でも、絶対にそうはならないから!」

三英雄を睨み返した。
その瞳に宿った意志の強さに、クラリスクレイスは「ほう」と感心した。

「……ぅう」

その時、セイが呻いた。
どうやら、意識が戻ろうとしているらしい。

「セイ!」

顔を覗き込んで、精一杯の想いを込めて叫ぶ。

「セイ!」

戻ってきてと。

すると彼は小さく呟いた。

「……を落としてくれ」

「えっ……」

もしかして、腕を……

けれどパティは諦めなかった。

「セイっ! しっかりして!」

すると今度ははっきりと、聞こえた。

「頼むから、声を落としてくれ……鼓膜が破れる」

早とちりした自分が、猛烈に恥ずかしくなった。
勿論、自我がありそうな様子なのは嬉しい。
けれど、それ以上になんだか言葉にできない感情が溢れてきて

「ばか!」

パティは思い切りセイの顔面を殴っていた。

「無事、なんだよね?」

問いかけると、彼は頷いた。

良かった。
声には出さす呟き、くたっと脱力する。

フィリアがすぐに容態を確認していた。
そこには先ほど話していた内容とは違うことを教えている。
どうやら、セイに心配をかけないためのようだ。

セイが何かをクラリスクレイスに言うと、
彼女は杖でわざと右腕を叩いていた。

「いって! いきなり何しやがる!」

抗議する彼を、三英雄は冷静に見つめて、

「フィリア。こいつに怪我の症状を伝えてやれ」

どうやら大丈夫そうだと判断したようだ。

彼が色々とクラリスクレイスとやりとりをしているその姿を、
パティはほっとして眺めていた。


これが、セイが知らされなかった、正確な現状だった。



双子の星に、照らされて | コメント:0 | トラックバック:0 |
| ホーム |次のページ>>